医学部生のOSCE(オスキー)試験官をして思う事、ちょっとしたぼやき
去年ブログで記載した医学部生のオスキー対策授業内容が以外にもPV数が高いようです。
あまり他の記事を書く人がいないのでしょうか。
さて、そんな話はさておき、今回試験官をして思った事がいくつかあります。
OSCEの位置づけは?
学生の評価は以下の五段階です。
5:医師と変わらないレベル
4:よくできている
3:許容範囲
2:不合格だが改善の余地あり
1:不合格
このなかで1か2が不合格になるわけですね。
で1か2をつけた場合はその理由を学生の評価シートに記載する事になっています。
試験官は複数名いますので、当然単一の試験官の評価で合否は決まりませんが、大体居同じ学生の評価者で同じように採点しています。
試験官の評価シートを元にその大学の中枢で学生の最終的な合否を決めるようです。
しかしながら、その評価も大学によりさまざまで、例えば私立大学では国家試験の合否を国公立大学より意識していますし、5年生の実習では実際に患者さんを相手にしますので、いわゆる「ヤバい」生徒はフィルターのかけたいわけですよね、学力的にも患者さんを相手にしたときの対応としても。
ですから、おそらくこういうナマの試験の評価は厳しいと思います。
学生の学力低下を感じる
去年、今年と同じ神経診察を担当しましたが、明らかなに上記の5段階評価で4から5の割合は減りました。5はゼロです。
逆に2の生徒も1−2割くらいはいました。4は一人。多くは3です。
私は採点は甘めですが。
確かに同時期にCBT(computer based test)という選択問題の学力試験もありますが、それにしてもちょっと危機感を持ちました。
おそらく臨床医として働けば段々とよくなるでしょうが、学生に診察をさせるという責任も大学スタッフとしてでてくるわけで。
少子化で大学受験者数は減って行きますが、医学部の定員がむしろ増加しています。
なので、受験勉強の限りで以前よりも学力の低い人が医学部に増える事になります。
私の出身大学も店員を2割増やしたころから、学生の学力低下の訴えが教官から増えたようです。
OSCEだけで「ヤバい」学生はわかるか?
コミュニケーション能力がない学生は明らかにわかりますが、実際患者さんとトラブルになるのは普通に試験をパスしている方でみうけられるような気がします。殊に、研修医の先生でいうと、尊大で、上司に確認しないで突き進んでしまう人ですね。しかしなが、業務が多すぎる、上司も忙しくて手が離せなかったなど複数の要員が重なって起きることが多いので、個人というのはトラブルの原因の構成要素の一つでしかないでしょう。これには単純に研修医ならびに上級医の業務負担を減らす事で改善出来ることも少なく有りません。同様に「上級医>研修医>学生」というセーフティーネットを昨日させるために、学生のトラブルを未然に防ぐという意味でも医師の業務にもう少し余裕が必要ですね。
OSCEの点数が低いとダメなのか
試験の中でいわゆるNG行為というのがあります。それは模擬患者に痛みを与える行為です。実際の試験では模擬患者はその大学の下級生がボランティアで参加しますので。
ンG行為を使用とした場合は試験官が制止することとなっています。
よくあるのはバビンスキー反射(足の裏をなぞる行為)をとるときに爪楊枝のとがった方でやろうとするときですね。
NG行為をした時点で不合格にするところもあるかもしれませんが、私の場合は不合格(評価1か2)にした学生は5分間の制限時間内に半分以上できなかったなど、かなり残念なケースが主です。そういう学生さんは能力はないのではなく、丁寧にやっている人も少なからずいます。試験という性質上、客観的に採点はしますが、逆に臨床ではそういう人の方が雑にやる人より好感が持てます。(もちろん、何をやったらいいかわからないという明らかに勉強不足の人もいます)
そして、もう一つは所見がでるまでその診察行為に執着してしまうことで時間を消費してしまうケースです。腱反射はでなくでもいいのです。打鍵器の握り方と、叩いている場所、所見を取る時の姿勢が正しければいいのです。
OSCEも試験です。時間内に必要な診察項目を満足するということに執着して、ある程度ドライに進める方が試験をパスするという意味では良いことを、ここで強調しておきます。
話は戻りますが、丁寧に診察する人は個人的には好きです。そういう気持ちは忘れず、実際に患者さんと接するまでとっておきましょう。経験を積めば所見をとることはどんどん早く正確になります!
最近思う事
スマートフォン、タブレット端末の普及で院内の患者情報の管理に支障がでる恐れあり
話は変わります。
学生実習中、一番問題になるのが患者さんのプライバシーです。
私が大学レジデントだったころ、その大学の実習生さんが、患者さんの情報を書いたメモをおとしていたということがありました。例えば、重大な病気の告知前でたまたま家族がそのメモを拾ったら...なんてことも現実的にあるでしょうね。
カルテ情報に関してはどの医療機関も専門の部署に届け出る、登録されたUSBしか使用できないなど、我々医師が学会や論文作成などで使用する際もさまざまなバリアがあり、簡単に電子媒体として持ち出せないようになっています。
学生の電子カルテ使用に関して、学生専用のIDとパスワードで管理するなどしてますが、今は携帯電話、タブレット端末などを学生が持参し、カルテ画面の情報を写真をとって保存する等しているため、我々医師も病院側も管理が困難になっています。
SNSなど情報化が進む中で、プライバシーの保護、情報の気密性は脅かされていると現場で感じます。
そういった倫理面の教育は、実習前の座学で当然行うのですが、大体学生は疾患と関係ないため聞いていないことが大半です。
むしろ現場での啓蒙が大事ですね。
これを読んだ学生さんも患者さんのプライバシーに関しては本当に気をつけて下さいね。(もちろん医師もです)
最後に
オスキーでの注意点/対策としては、
- 制限時間内に診察行為をやりきる。
- 所見をとるときに大事なのは、結果ではなく過程である。道具の使い方、正しい姿勢など確認しましょう。
- 当日あせらず行うためには、各大学のOSCE指導要項などで事前に知らされている採点項目を満足するようにシュミレーションを繰り返すこと
ですね。
加えて、手指消毒のアルコールは付けすぎないように。試験開始してから手が乾くのを待っていると時間はなくなります。乾く前に診察をして模擬患者が冷たがったときに「患者の苦痛に配慮している」という採点項目の評価がどうなるかはその場の先生の判断によるでしょう(笑)
これから現場にでる学生さんは、将来の専門科を決める上でも参考になるように現場の先生と関わって有意義な実習をしましょう。患者さんは多くは人生の先輩ですから、尊大にならず、謙虚に礼儀正しく、接して下さい。
医師免許取得後はその何倍ものやりがい、責任感、知的感動がまっています。もちろん辛い事、傷つく事もありますが、実は我々医療者自身が患者さんから救われているときもあるんです。
では。
こんな記事も書いています。先にこちらからどうぞ。