コードブルー 第4話の感想、脳外科的視点
更新が遅くなりました。コードブルーの先週の話、今更ですが。
ネタバレ嫌な方はいつも通りここでやめてください。
少年が首に尖ったもの刺さってましたね。
(すいません、何が刺さったのか自分もそのへんは当直中でよく観ていません)
外傷性動脈瘤ができていましたね。
頭の中に血液を送るメインの血管は4本あります。頸動脈(正しくは内頸動脈)と椎骨動脈が左右で計2本ずつあります。2本の椎骨動脈はと途中で合流し脳底動脈という一本の血管になります。そのあとまた二股に分かれ後大脳動脈となるわけです。後大脳動脈には後交通動脈という血管があり、それが同じ側の内頸動脈を結んでいます。ですから、脳内の太い血管は前交通動脈で左右の内頸動脈を、後交通動脈で同じ側の内頸動脈と後大脳動脈を結んでおり、ちょうど輪になっているので、どこかの血管がダメになっても脳の血流を保とうとする構造があるんです。
コードブルーの患者さんですが
確かに前交通動脈を介して反対側からの血流はなさそうですが、若い人は椎骨動脈から後交通動脈を介した血流もあるしなー…なんてね。
もう少し血流の評価してもいいんじゃないかと思います、正直いいますと。
しかしながら、今回の外傷性内頸動脈瘤は、我々脳神経外科ではなかなか珍しい症例で、研修医の名取先生(Hey!Say!JUMP有岡くん)がスラスラと答えてましたが、はっきりいって専門医前の若手脳神経外科の先生も、試験勉強してなければあんなに答えられないんじゃないかなーと思います。
そして、その症例で、首の内頸動脈の確保や腕の血管(橈骨動脈)を使ったバイパスも、若手だけでやることはないと思うんですよねー。
ドラマだからといえばそうなんですけど、結構手術の内容としては高度なことやってますよよ。。。
そして、話は変わって終わりに小脳腫瘍の女の子が痙攣している(?)場面がありましたねー。
小脳腫瘍ではあまり痙攣はないのと、それだけ頭の圧が高くなっているなら意識もあやしいんですが…。医学生は、あの光景をあまり鵜呑みにしないようにといいたいですね。
話は少し変わります。橘先生の息子さんが吐血していました。
ストレスからの消化管潰瘍が原因だそうで、これはよくあるといいますか、大事ですね。
頭の病気も実はストレス性の胃潰瘍などは起こりやすいのです。胃薬を患者さんに使います。
特に脳梗塞の場合は治療に血をサラサラにする薬(抗血栓薬)を使いますが、胃潰瘍で吐血すると血が止まりにくくなりますし、これにより血液が減ってしまい血圧が下がり、頭の血流が悪くなることでさらに脳梗塞を作ってしまうことがあります。
橘先生の息子さん(ユウスケくん」もおそらく抗血栓薬を使っていたと思いますので、胃薬はもちろん使用していたでしょうし。
入院患者、特に集中治療室患者のストレス性消化管潰瘍は大事ですので、これは研修医の先生や学生も抑えておきたいところでしょう。
今度の学生さんの試験問題にも採用するのもいいですね。
えーと、一般の方向けのポイントは、
血をサラサラにする薬は副作用に消化管潰瘍があるため、胃薬とセットで処方することが多い
というところでしょうか。
では、今回はこの辺で。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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コードブルー第3話〜研究者の目線で〜
帰省していたので、ゆっくりみることができました、コードブルー第3話。
例のごとくネタバレになりますので、みたくない人はここまでにしてください。
みますか?では始めます。
個人的に気になったのは小脳血管芽腫の女の子
あれだけ大きいと、あんな滑らかにピアノできるのかなぁーとか、若い人の血管芽腫なので遺伝性の病気は大丈夫なのかなぁーなど、少しモヤモヤしました。
ちなみに遺伝性の病気はフォンヒッペルリンドウ病です。
人の名前が付いた病気の中で最も大変なものの1つだと私は思います。
私の患者さんにも過去にいましたが。
ドラマの中のあの女の子もこれからどうなるか、次回以降の付箋ですよね!楽しみにしたいと思います。
さて、シアン化合物を飲んで自殺しようとした研究者の人が登場しました。
研究が、先を越されてうまくいかなくなった…というのが理由ですよね。
私も研究をやってる身分ですが、
すごく気持ちがわかります。
いや、ほんと。
基礎研究は立ち上げてから結果出るまで3年以上かかるのが普通です!
ですから、それが他の人に先を越されてしまうのは
今までの自分の時間はなんだったんだろう…ってなるわけです。
とくに、外部から援助を受けて研究してたりとか、プレッシャーありますよね。
研究はお金がなければできません。
1つの試薬で8-10万なんて普通です。
しかもそれ20回くらいしか使えなかったり。
研究費をもらえなくて、鬱っぽくなったり、露頭に迷うような人を私も知ってます。
研究者の世界とは色々とシビアなんです。
そのぶん、結果が出た時はとても嬉しいものですよ。
「この結果は世界中で自分しかしらない!」ってなるわけなので。
知的感動など得られるものもたくさんあります。
ですから、こういった見方もあるんだぞということで、少しでも伝われば幸いです。
博士号を取るだけのために大学院に行く人が医師の中には多いのですが、研究することでわかることもたくさんありますし、臨床の仕事を客観的に見ることも前よりできるようになります。何より論理的思考や、壁に当たった時の修正方法など…この辺はスポーツのスランプに似てますかね??
やや、好き勝手に今回は記事を書いてしまいましたけど。
そんな感じで今回は締めたいと思います。
最後までお付き合いくださりありがとうございます。
コードブルー、次回も楽しみにしたいと思います。
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コードブルーはじまりましたね!〜現役医師の感想〜
私が若手医師だったときに一世を風靡した人気医療ドラマの続編が始まりました。
山ピーは脳外科医ですか。
そんなかっこいい脳神経外科医がいたらいいですよね、うんうん。
私も病棟メインでやっていたころは外傷や脳卒中などでよく呼ばれていました。懐かしいです、当時が。
で、脳神経外科というと当直では外科系か神経当直(おもに脳卒中系を診る専門当直)であることが多いわけで、特に野戦病院では外科系当直で研修医の先生と重症外傷の診察など行っていまいた。
ここからは一部ネタバレになってしまいますので、みたくない人はここでやめてください。
一般的に医療系ドラマは我々からするとツッコミどころが多く、
ドラマであった錐体骨髄膜腫のcombined petrosal approach(コンバインド ペトローザル アプローチ)なんていうのは脳外科手術のなかでちゃんとできる人は全国に何人いるんだろうというレベルの超難しい手術法で、「舌下神経管の開放…」なんていうセリフもありましたが、おそらく脳神経外科医で専門医でない先生からすると「what?」というような内容です。山ピーらは非専門医の設定ですから、普通はそんなにわからないんですけど…そこはドラマですからね。いいですね、頭蓋的外科手術がわかる若手、しかもイケメン、実際いたらそりゃあ看護師さんに人気ですわ(嫉妬)
で、話は変わりますが
屋外で子供にドリルで頭に孔をあけて血を抜く場面がありましたね。これはなかなか頭部CTなしで行うのは勇気がいるなと…。私も、手術室ではなく救急外来で緊急で同様の処置をしたことはありますが。
あれ、ドリル使っていると頭が動いて孔開けにくいので、できればその場にいるフライトナース(比嘉愛未)さんには頭の固定も少ししてもらえると…なんてこれ以上専門的に話すとひきそうですのでこの辺で。
しかーっし!!
良くない点として、失敗した点滴の針は床に捨ててはいけない!診察や処置、手術はマスクしましょう。太っているからと言って妊婦を見逃してはいけません。そして、研修医の先生も自尊心がありますから、そこを傷つけないようにコミュニケーションをとりながらテンパらないように指導医がフォローするべきですね。まあ、ドラマが進む中で段々とそういうところが改善していくシナリオになりそうですが。
いずれにしても、医師も人間でして、マルチタスクはミスの元です。
自分のキャパ以上の仕事を抱えると、どこかに無理が生じてしまいます。
上級医は個々の実力やメンタルなども考慮しながらタスクの適正配分が大事です。
これは医療現場に限らず、その他の管理職の方も同じでしょう。
色々と実際の現場との差異はありますが、将来の進路を考えている人や実際の医療系の学生さんにも楽しめるドラマではないでしょうか。
私の周りではガッキー萌えがすごいのですが、あんな人はみたことありません。概して、女医さんは図太いです…ホント。(こんなこと言うと、いつか撃たれそうだな)
救急医は大事ですが、脳神経外科医や心臓血管外科医は外科系のなかでホントに人手不足甚だしいので、ドラマではぜひ脳外科的なかっこいい場面をつくっていただいて脳外科志望が増えることを制作側には期待したいと思います。(個人的に)
最後までお付き合いいただきありがとうございます。