こどもの頭痛のみかた〜診断のポイントから治療まで〜
今回は子供の頭痛のみかたです。
こどもの頭痛は精神的なものと誤解され、学校や家庭で不当な扱いを受けていることが多いです。まず、小児にも片頭痛は多いこと、そしてそれは大人とは違い典型的な症状が出にくいため、慣れた小児科の先生にはわかっても、案外我々脳神経外科でさえ見落としてしまうことがあります。
まずポイントを列挙します。
- 小児の頭痛は早くて2歳後半からうったえる
- 小児の1次性頭痛は片頭痛と緊張性頭痛がほとんど
- 外来を受診する児は圧倒的に片頭痛が多い
- 片頭痛患児では母親の8割が片頭痛
- 片頭痛の持続時間は1−72時間(大人は4ー72時間)
- 前頭側頭部の痛みなら両側性でもよい
小児片頭痛の特徴:大人と違い、典型的な症状が出にくい!
- 男女同頻度(大人は女性が多い)
- 頭痛の持続時間は短1−72時間と短い(大人は4−72時間)
- 両側性
- 前頭部が痛い
- 拍動性(ドクンドクンと脈打つ感じ)がない
- 朝、発作的な頭痛が多い(さぼりと誤解されがち)
また新国際基準で
- 周期性嘔吐症
- 腹部型片頭痛
- 良性発作性めまい
が加わりましたので、参考までに診断基準を記載しておきます。
周期性嘔吐症
A BおよびCを満たす発作が5回以上ある
B 1時間〜5日間つづく強い悪心と嘔吐の周期性発作
C 発作中の嘔吐は1時間あたり4回以上で1時間以上続く
D 発作間欠期は無症状
E その他の疾患によらない
腹部型片頭痛
A B〜Dを満たす発作が5回以上ある
B 1〜72時間持続する腹痛発作(未治療もしくは無効の場合)
C 腹痛は以下の特徴をすべて満たす
1.正中部、臍周囲もしくは限局性の乏しい
2.鈍痛もしくは漠然とした腹痛
3.中等度から重度の痛み
D 腹痛中少なくとも以下の2項目を満たす
1.食思不振
2.悪心
3.嘔吐
4.顔面蒼白
E その他の疾患によらない
良性発作性めまい
A Bを満たす発作が5回以上ある
B 前触れ無く生じ、数分〜数時間で自然軽快する
C 発作間欠期は神経所見、聴力・平衡機能は正常
D 脳波正常
下記に参考として小児の頭痛のガイドラインを載せておきます。
http://www.jhsnet.org/GUIDELINE/gl2013/271-289_7.pdf
小児片頭痛の治療:大人とは少し違います
急性期治療
予防治療薬
- シプロヘプタジン(ペリアクチン):10歳以下肥満がなければ就寝前に2-4mg内服
- アミトリプチン(トリプタノール):緊張性頭痛合併例、不安・うつ要素あれば使用。5-10mg 就眠前投与で開始し、1mg/kg/日まで増量
- バルプロ酸(デパケン、セレニカ):※
- ロメリジン(ミグシス、テラナス):中学生以上で使用
- トピラマート(トピナ):※、就眠前15-25mgで開始、50mgを一日2回内服へ
※ちなみにバルプロ酸、トピラマートなど抗てんかん薬を内服している女児は生理がきたら、葉酸の内服もしましょう。国際基準では「女性の葉酸内服は月経開始から閉経まで」です。←葉酸欠乏により胎児奇形のリスクとなるため。
上記は医療者向けのメモ書きのようでわかりにくいかもしれませんね。ざっと薬の名前とそれがどういく意図で使用されているが伝わればいいかなと思います。
小児の慢性連日性頭痛:心理社会的要因の関与
大人でも厄介ですが、子供でも慢性連日性頭痛はあります。生活に支障がでることが多く、多くは慢性片頭痛か慢性緊張性頭痛です。薬物乱用頭痛はまれです。小児では「心理社会的要因」の関与した頭痛が多く、不登校につながります。学校での人間関係、家庭内の問題、性格上「いい子」はストレスを溜め込んでしまいます。
親子のカウンセリングで心の葛藤が言語化できると頭痛が軽減します。
こればっかりは我々だけでなくケースワーカー、カウンセラー、心療内科医、精神科医、小児科医など他業種での連携が大事になります。
小児一次性頭痛の簡易診断アルゴリズム
藤田光江先生の著書より、非常にわかりやすい図がありますので紹介させていただきます。
まとめ
- 小児の頭痛にも片頭痛は多い(特に母親が片頭痛持ちの場合)
- 初期には周期性嘔吐症など頭痛のない片頭痛から始まる。
- 小児の頭痛は心理社会的要因が関与していることも多く、カウンセラー、小児科医など他業種との連携が大事
- 適切な診断、治療のために保護者・学校職員も含めた啓蒙が必要
- 髄膜炎、もやもや病などの二次性頭痛も忘れない
見慣れていない小児科医、神経系医師(脳神経外科、神経内科等)では片頭痛を見逃す可能性や、ただしく治療がなされないことがあります。保護者の方の「もしかしたらうちの子も…」という気づきが解決につながることもありますので、今後もいっそう認知してもらいたいと考えています。
また、稀ではありますが、もやもや病という病気の症状として頭痛が起こることも有りますので、そのような場合はMRIをとることも考えなくてはなりませんね。発熱があれば、髄膜炎も…このへんは小児科医や神経系医師はまず見落とさないでしょうけど。
本日はここまでにいたします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。