脳外科医もつの日常

30代、中堅?脳神経外科医の日々のつぶやき。医療、プライベート、趣味など気ままに書いていきます。

ある日の外来の話〜ふらつきで悩む患者さん、いらない薬はバッサリ切る!〜

 外来に来た患者さんの話です。

 この方は転居に際し、今まで通院していたかかりつけ医の紹介状をもって私の外来に来院されました。
なんでも、脳梗塞の既往があるから…らしいです。

 一般的に脳梗塞後しばらく経った患者さんは頸動脈狭窄症や頭蓋内の血管狭窄など、今後手術を行う可能性のある方につきましては定期的な画像検査(MRI、CT、エコーなど)は脳神経外科外来で行うことがありますが、日々の投薬については開業医の先生に一任することが多いと思います。
 というのも、脳梗塞を経験した患者さんは高血圧、脂質異常症、糖尿病、心不全などの薬を飲んでいることが少なくなく、再発予防も血をサラサラにするお薬(抗血栓薬)を継続することも含めて内科的管理が中心になるからです。

脳梗塞脳出血はやはり高齢者におおく、患者さんは頭以外の病気もいつなってもおかしくありませんので、そういった意味でもやはり相談しやすい開業医の先生、いわゆるかかりつけ医を作っていただくのが良いを考えます。



 患者さんは80代女性でふらつくときが今でもあるという相談もされました。

内服は
血圧の薬(ドキサゾシン)、糖尿病の薬2剤(メトホルミン、チアゾリジン)、抗血栓剤2剤(チクロピジン、シロスタゾール)、高脂血症の薬(スタチン)、貧血の薬(鉄剤)など漢方も含めれば計7種類飲んでいました。

 びっくりしたのは抗血栓薬を2つも飲んでいたことです。現在、安定した脳梗塞の患者さんについては血をさらさらにする薬(抗血小板剤について)は1剤で良いとなっていますし、以前の私のブログでも記載しましたが、後期高齢者は消化管出血を起こしやすい理由で血をサラサラにする薬と一緒に胃薬を使うべきですが、それがないのです…2剤も飲んでいるのにですよ!。
聞くと、脳梗塞といわれたのはただめまいがあったからというだけでもう10年以上も前の話と言うじゃありませんか。
MRIでも過去の脳梗塞の痕跡や頭の血管に狭いところもありません。以前のめまいは脳の血流が原因ではない気がしました。そして糖尿病の検査もHbA1Cは5.9%。これもブログで記載しましたが、高齢者の2型糖尿病はHbA1Cは7.5%を超えていてもいいのです。

そういった点から

  • ふらつきは脳の問題ではなく多剤内服の可能性がある
  • 高齢者でふらつき、転倒してしまうと骨折や頭蓋内出血のリスクがある
  • 患者は2剤も血をサラサラにする薬を飲んでいて出血しやすいばかりか、そもそも脳梗塞ではなかった可能性も高い。
  • 血糖値は高くないため、糖尿病の薬は減薬できるし、そうすることで多剤内服による副作用の問題も多少解決できる


ということでまず、

  • チクロピジンとシロスタゾールという2つの血をサラサラにする薬は中止。
  • 採血でコレステロール血も高くなかったため一旦スタチンも中止。貧血も改善しており、一旦中止し、次回の採血結果をみる。
  • 血圧も高くなかったためドキサゾシンも中止。
  • 糖尿病の薬は副作用が多彩なチアゾリジンは即中止、メトホルミンも中止してみて次回の採血で血糖値が高ければ再開

・・・とし、結局漢方以外何も飲まないことになりました。


次回の採血で貧血の値、血糖値、脂質の値次第では一部再開もありえますが、ひさびさにこんなに内服薬を整理しました。


この手の相談は少なくないです。
「ふらつき、めまい」で脳外科へ紹介される先生は多いのですが、実はご自身の処方の多さが患者さんの不調の原因になっている…なんてこともあるかもしれません。

高齢者は出来れば内服は5つ以下にしたいですね。心臓関係の薬は減らしにくいのでそこは詩のしょうがないと思いますが。

今回に関連した過去記事は下記です。

motsutaro.hatenablog.com
motsutaro.hatenablog.com
motsutaro.hatenablog.com




最後まで読んでいただきありがとうございました。