5種類以上の内服は、本当に必要か確認しましょう〜ポリファーマシー(多剤内服)について〜
本日はポリファーマシー(多剤内服)という内容です。
(はじめに、本内容は個人的な見解を含みます。ご了承ください)
近年、高齢者の多剤内服が議論になっています。厚生労働省でも高齢者医薬品適正使用検討会なるものが開かれておりガイドライン策定も進めているようです。
概して循環器系の薬は多くなりがちですが(それはしょうがない気もします)、高齢者にかぎらず、多剤になりがちな人の処方を見てみると、
・血圧の薬(高血圧に対して)
・尿酸の薬(痛風予防のため)
・胃薬(ときどきある腹痛?)
・下剤(便秘の薬)
こんな感じでしょうか。
で、血圧は2剤になったりして…。
上記に加え、何らかの既往に対する再発予防の投薬が入ったりするわけですね。
ポリファーマシーは5剤以上と言われますが、上記のごとく生活習慣病関係がフルコースだと5剤は余裕で到達できます(上記に加え糖尿病の投薬も入るわけですから)
個人的な意見として、ポリファーマシーは悪性疾患や循環器疾患などを除けばあまり望ましくないと考えます。
上記になかで、まず切れそうなのは睡眠薬です。
睡眠薬はデパス、レンドルミンなど短期作用型といってすぐに効くものは1ヶ月の使用で半数が依存症になる可能性があるようです。
ベンゾジアゼピン(BZD)という種類の薬なのですが、これらは飲み始めて数週間〜数ヶ月で効かなくなりますね、大体。それ以降は依存が強くなるので患者さんも我々がやめるよう提案してもしぶる人も出てくるくらいです。
急にやめると離脱症状といって、不眠、いらいら、場合によっては痙攣することもあります。減薬していく方法もありますので、気になる方は主治医の先生に相談しましょう。イケてない先生はBZDの減薬のテクニックがありませんので精神科や神経系の医師がオススメです。
参考までに少し載せましょう。
★離脱症状は短時間作用性BZDが2~3日、長時間作用性が5~10日で発現します。
★BZD減量は4~8週かけ毎週5割ずつもしくは2週ごと10~25%ずつ減らしましょう。
★数種のBZDはジアゼパム1種にまとめましょう
上記は処方医向けの話し。
処方されている方の生活習慣ですが、
★不眠の人は睡眠制限しましょう
★大食いは避けましょう
★定時に就寝しましょう
★昼寝は避けましょう。
★寝室静かにしましょう
★TV・電灯、寝る前の携帯電話やパソコンも避けましょう
こんなところから意識するといいと思います。
さて、話を戻します。
高齢になり、いろんな病気にかかれば概して内服は多くなりいわゆるポリファーマシーになちがちです。
問題なのは、
複数の薬剤が不適切に処方されていたり、薬物治療で意図する効果が得られていない場合です。
・治療がエビデンスに基づいていない
・治療における害が利益を上回る
・薬物相互作用の問題:飲み合わせが悪い
・金銭面など内服の負担が患者の許容範囲を超えている
・他の薬の副作用を治療するための処方
などなどです。
数に関して言えば、
5−6種類以上で薬物相互作用も問題や転倒リスクが増えるという報告もあるのです。
これが10種類近くなってくるとさらにリスクは増えます。薬物相互作用に関してはほぼほぼなんらかあると思われます。
特に高齢者の場合、薬を分解・排泄する力が弱くなっていることもあり副作用自体が出やすいこと、そもそも体力・筋力低下により転倒リスクが高いことに加え、筋肉を緩める作用のあるBZD系の睡眠薬を飲んでいればさらにその危険性は高まります。
これは本当に個人的な見解ですが、
転倒による大腿骨骨折の数は、骨粗鬆症の薬が進歩するにつれ先進国では減少にあるなか、日本ではその傾向は乏しい印象です。海外に比べ、日本の方がBZD処方の多さ、ポリファーマシーがあるように思うのです。因果関係、無いとはいいきれないような気がします。
高血圧の薬を減らした後、偶発的に脳出血を発症した場合でも医者側が訴えられることもあり、なかなかこちらとしても薬を減らすよう患者さんを説得するのは勇気と根気と外来診療時間が限られていることもあり困難になってきています。
それもまた医療費が減らない要因にもなってきてるのですが。
ただ、不必要な薬を判断することは難しいことですし、薬を増やすより労力としても3倍以上かかるという個人的な感覚です。
減薬を提案する先生は良い先生かもしれません。
あなた自信の問題です。
本当にその薬が必要なのか改めて確認してみるのもいいかもしれませんし、機会があれば主治医に相談してみてはいかがでしょうか。
最後まで読んでくださりありがとうございました。