脳外科医もつの日常

30代、中堅?脳神経外科医の日々のつぶやき。医療、プライベート、趣味など気ままに書いていきます。

血をサラサラにする薬を飲んでるご高齢の方、胃薬も飲んでますか?

こんちには。

今回は少し真面目な内容です。

下記の論文はランセットという非常に有名な雑誌なのですが、

Age-specific risks, severity, time course, and outcome of bleeding on long-term antiplatelet treatment after vascular events: a population-based cohort study.

http://Lancet. 2017 Jul 29;390(10093):490-499. doi: 10.1016/S0140-6736(17)30770-5. Epub 2017 Jun 13.

要旨としては、

心筋梗塞脳梗塞などの血管の病気の再発予防で主にアスピリン(商品名はバファリン、バイアスピリンなど)という薬を内服している方を追跡していったところ、3166人中405人に初発の出血イベントがおこり、そのうち40%が上部消化管出血だった。

・75歳以上になると大出血は増大(75歳未満の3倍のリスク)

・障害もしくは死亡に至る上部消化管出血は、75歳以上で60%、75歳未満で25%

・上部消化管大出血での死亡は上記のうち45例で、頭蓋内出血の18例よりも大幅に多かった。

だったようです。

 

論文の図のうち、1つだけ抜粋しますと、

f:id:motsutaro:20170909160854p:plain

上記のグラフを見ていただくとわかりますが、歳をとるにつれ、血をサラサラにする薬を内服している人の出血イベントは右肩あがりですね。とくに赤い折れ線は入院が必要な出血ですが、85歳を超えると年間7%です。

 

我々脳神経外科医は脳梗塞の患者さんの再発予防に血をさらさらにする薬を処方しますが、上記のように出血リスクの高い人は胃薬も合わせて処方しています。

 

ちなみにこの論文は英国のもので、胃薬内服は3割だったようです。

しかし、アスピリン75mg腸溶錠を使用した例が大部分であり、容量や規格(心筋梗塞脳梗塞の予防では100mgです)、そして他の血をさらさらにする薬を飲んでいる人には当てはまらない可能性があります。

 

そして、日本人など東洋人は欧米人よりも少なくとも脳卒中に関しては出血が多いと言われていますので、人種差も考慮すべきかと思います。

 

 

年齢が75歳以上だけでなく、上部消化管出血の既往、肝臓が悪い、アルコールをたくさん飲む、血液疾患がある(白血病など)などの場合も胃薬の内服については確認してもいいかと思います。

 

血をさらさらにする薬飲んでいる人全例に胃薬というのは医療経済的にも疑問はありますし、胃薬にも副作用はでることがあります。患者さんに応じてリスクと利益の評価を数年単位でしながら適否を検討するのがいいのではと思います。

 

 

 

少しむずかしい内容だったかもしれません。

つまり、

高齢(75歳以上)や消化管出血の既往のある方、その他血が止まりにくくなりそうな素因のある方は、血をさらさらにする薬を飲んでいるならば胃薬も飲みましょう。

 

です。胃薬はPPIと呼ばれるものがいいですね。詳しくは直接話ができる主治医や近所の開業医の先生にご相談ください。

 

 

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。