脳外科医もつの日常

30代、中堅?脳神経外科医の日々のつぶやき。医療、プライベート、趣味など気ままに書いていきます。

学会懇親会の話題の背景にある、脳外科不足、それ以上の医療崩壊への不安

学会から帰ってまいりました。地方学会ですが、それなりに充実していました。

残念だったのは以前シャツのコラムでも書きましたが、クールビズを意識して透けにくいオックスフォードシャツの半袖で行ったら会場の空調が強くて寒かったです。

 

今週末も都内ですが発表がまたあるので、服装はよく考えたいと思います。

 

さて、学会というと、楽しみの一つが懇親会であります。

 

今回は会場となったホテルの中のスペースに飲食+ドリンクコーナーが作られまして(大体ホテルビュッフェにお酒がでるイメージです)、地元の名物などを楽しみつつ学会でしか普段なかなか会うことのできない他大学の先生方とお話することができました。

そこで話題になるのは発表内容もそうですが、入局者問題です。総じて「うちは誰もいないよ・・・」といった暗い話題になるのですが。

 

さて入局者の説明の前に医師の所属について説明しなければなりません。

一般的に常勤医には2つの所属形態があります。

1つはその勤務先の病院に籍がある場合と医局に籍がある場合です。

同じ病院にいる医師でもその病院の所属と、医局の人事で派遣されている場合があります。それぞれのメリット・デメリットなどはここでは述べませんが、最近は制度の過渡期でありまして医局人事よりになりつつあるようです。私も大学医局に属しております。

初期研修の2年間が終了したあと、病院所属として専門を決めるか、大学医局に属していくかという選択を研修医2年目ですることになるのですが、医局も人が増えなければ関連病院のポストを維持できませんし、病院所属医師に比べ流動的に人事を運べますのでおそらく医師不足の地域など地方は医局人事が大事になると思うのです。病院所属の形態だけだと都心や大病院など人気のあるところしか医師が増えないことになりますので。

 

話は戻ります。

 

これは厚労省のHPからだったかな?各科の人数の推移がでているページがありますが、外科系の人気の下降がすごいです。現在はもっと顕著です。

 

医師の人気はまだまだ根強いですが、その中でも

時間外労働、裁判などのリスク、体力面、私生活の充実など外科系はどうしても総じて内科より大変であるという状況が続いています。

 

「医師は聖職だから」とか「医師は公僕」だ、なんて言うのは時代遅れなのでしょう。

学生さんや研修医の先生も、いわゆるキツイ科には進もうとはしないのです。

そんな中、脳神経外科はまさにそのキツさにおいては心臓血管外科とトップ争いをするくらいかもしれませんが(体育系強すぎる職場の整形外科もキツイですが)、年々志望者は減っています。

 

 

知ってますか?

3大疾病、がん、心臓病、脳卒中のうち脳卒中の大部分を担っているのは脳神経外科神経内科、地域によってはほぼ脳神経外科であるということを。

 

今後ますます脳外科減少傾向が進めば、脳卒中診療は破綻します。

 

日本の医師の給料は常勤医であれば、卒業年度と役職で基本給が決まり、その他は当直と時間外労働、アルバイトです。

仕事の大変さ、病院への利益貢献度、裁判などのリスクは考慮されていません。しかも人が多く、時間外労働の少ない科ほどアルバイトができるため、結果的に給料も高くなるという事実。

そりゃあ、なかなか脳外科なんてなりたがらないですよ。

 

そんなこんなで、全国的に脳外科志望者は減少しており、我々は非常に不安を抱えております。学会懇親会で、その胸に秘めた不安な気持ちを誰かと共有したくなるわけです。

 

しかし、、、

 

今後高齢化、2025年問題を前に診療報酬の引き下げなど、ざっくりいうと病院が儲からなくなるように保健点数も改変されます。さらには消費税引き上げにより消耗品など物品購入のコストも増えることとなります。保険診療の限りでは診療行為の値段も国しか決められませんので、診療は薄利多売、人件費などコストカットを積極的に行わなければならなくなるでしょう。しかも今後時間外労働も制限されるという。ますます医療者の労働環境も悪くなるばかりか、時間のかかる手術も制限されるかもしれません。

具体的には腹腔鏡の手術は術後の痛みや傷のあとも少なく患者さんにとって有益なことがいっぱいあるわけですが、開腹よりも時間と手間がかかるため、腹腔鏡でやっていたものが開腹手術になるかもしれません。これは極論的ですが、あくまで可能性のひとつとしてありえるということです。

 

いずれにしても病院そのものだけでなく、医療従事者の労働環境の悪化、最終的には病院破綻など地域医療の崩壊の危険性すらはらんでいます。

 

そうやってきたのは国ですが、いずれそのツケは国民にまわってくるかもしれませんね。

 

 

 

暗い話になってしまいましたが。

 

 

来年の診療報酬改定はとても興味があります。透析医療、在宅などそれ次第では大変になる可能性もありますので、開業も慎重に。

 

 

ところで、アメリカに住んでいる私の先輩は出産で800万円だったそうです。日本は40万円くらいですか?

もちろん保険に入ってたので800万円は払ってないみたいですよ、でも家族1人あたり毎月5万円が保険に消えているそうです。

 

そう考えると日本はなんて素敵な国だ!そう思うかもしれませんね。

 

 

 

 

最後までお付き合いいただきありがとうございます。