脳外科医もつの日常

30代、中堅?脳神経外科医の日々のつぶやき。ちょっとした健康の話から完全なプライベートの内容まで

脳出血で失明した人の話

眼に問題がなくても、視神経が正常でも、目が見えなくなることが脳の病気ではあります。

 

 

 

それは後頭葉という部分が傷んでしまった場合です。

「後頭」と書くくらいなのでもちろん後頭部の方です。

 

ここは視野をつかさどるところです。

 

よく、頭の病気は症状の出ている方と反対側に病気があるといいますね。

後頭葉もそれがいえます。右の後頭葉が傷んでしまうと左側の視野が欠けてしまいます。

 

心原性脳塞栓症という病気を例にとりましょつ。

 

これは心房細動という不整脈が原因になることが多いのですが、この病気で後頭葉に血液を送る血管が根元からつまってしまうと、後頭葉の全域が脳梗塞となってしまい、結果、片側の視野が欠けてしまうということになります。

 

後頭葉全域の脳梗塞では、ちょうど左右両方のメガネの左半分を黒く塗った状態でものを見るような状況になります。

 

 

もう、お気づきだと思いますが、これが左右両方の脳梗塞になると視野全体がダメになってしまうというわけです。

 

正確には中心視野は保たれることもありますがここではその理屈は割愛します。

 

 

 

そんな左右両方の後頭葉がつまることなんて………いや、あるんです、たまに。

 

実際は脳梗塞の方が経験が多いのですが、今回は脳出血の話です。

 

 

脳出血で、そんな状況になることは実はあまりありません。

 

脳出血の一番の原因は高血圧です。脳出血全体のうち7割は高血圧性脳出血と言われるくらいです。ところが、高血圧が無くても脳出血を繰り返すことがあるのです。

 

それは、アミロイドアンギオパチー(またはアミロイド血管症)という病気。

 

アミロイドというタンパク質が脳に沈着し、血管が脆くなることで脳出血を繰り返してしまうのです。

 

特に脳皮質下出血という脳の表面に近いところに起こります。

 

 

 

 

私が研修医のころ、左の後頭葉脳皮質下出血で入院したおじいさんがいました。非常に気さくな方でしたが、高血圧の管理が今ひとつで入院した時の血圧も高く、高血圧性脳出血として治療をしました。もちろんアミロイド血管症の可能性もあると説明して。

 

右側の視野障害同名半盲と言います)が後遺しましたが、元気に退院していきました。

 

 

しかし、それからしばらくして今度は反対側の後頭葉脳出血を起こしてしまったのです。

 

薬をしっかり飲んでいたので血圧は高くなかったのですが、また起こってしまいました。

 

アミロイド血管症なのでしょう。

 

 

結果、全盲となってしまいました。

 

 

明るかったその男性はひどく落ち込み(もっともだと思います)、会うたびに言うのが、

 

孫の顔が見れなくなってしまったと。

 

 

私も胸が締め付けられる思いでした。

 

 

この病気は残念ながら効果的な治療がありません。

 

二度、三度と脳出血を繰り返し、脳の半分以上が破壊されて廃人のようになってしまう人もいます。

 

そして、この原因のアミロイドはアルツハイマー認知症の原因にもなります。

 

 

 

実は、アミロイド血管症はMRIでわかる部分があります。

 

微小脳出血という小さな出血が脳の皮質にあると、その疑いがあるといえます。

T2✳︎(ティー ツー スター)というMRIの撮影条件で検出できますので、もし若くして微小脳出血を指摘された方は要注意です。

 

 

因みに、微小脳出血はそれが脳の深部にあると高血圧性脳出血、脳の皮質にあるとアミロイド血管症やアルツハイマー認知症のリスクと言われています。

 

興味のある方は他の方のホームページなとでもっと詳しくでていますのでご参照ください。

 

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。